旅人達に灯る記憶|山村テラスと月夜の蚕小屋の薪ストーブ物語

2025年10月4日

こんにちは。
代表の佐藤哲郎です。

今日は、私たちが薪ストーブを届けている宿で生まれた、ちょっと素敵な“火の物語”をご紹介します。

旅人達に灯る記憶|山村テラスと月夜の蚕小屋の薪ストーブ物語

長野県・佐久穂町。
豊かな自然に抱かれた山あいに、二つの小さな宿があります。
〈山村テラス〉、そして〈月夜の蚕小屋〉。

それぞれに違った表情を持ちながらも、どちらの宿にも共通しているのは「火のある暮らし」。
夜になると、Dr.Craftの薪ストーブに火が入り、旅人たちはその炎を囲みながら静かな時間を過ごします。

そのぬくもりが、やがて心に“記憶”として灯っていくのです。

ゲストブックに描かれた記憶達

ある日、オーナーの岩下さんが見せてくださったもの。
それは、宿泊した人々が自由に感想や絵を描く「ゲストブック」でした。

ページをめくると、
そこにはDr.Craftの薪ストーブが描かれたスケッチがいくつも。
鉄の質感、ゆらめく炎、湯気を上げる鍋、
そして「ありがとう」「あたたかかった」「また来たい」という言葉たち。

描かれた線の一つひとつに、旅の夜の空気と、炎のやさしさがそのまま閉じ込められていました。
それはまるで、薪ストーブが旅人たちの心に“静かな火”をともしたかのようでした。

山村テラス──森の中のリビングで

ゲストブックの1ページに描かれていたのは薪ストーブの前で湯気を立てるビーフストロガナフとバターの溶けたトースト。

「ビーフストロガナフが最高に美味しかった」、「星がびっくりするほど見えた」
短い言葉とともに描かれたその絵からは、旅の夜の空気と、食卓を包むぬくもりが伝わってきます。

〈山村テラス〉のリビングは、森とひと続きになった空間。
薪をくべる音、スープの香り、窓の外の夜の気配。
そのすべてが溶け合いながら、“火のある暮らし”の原点のような時間を生み出しています。

次のページには、椅子に腰かけて炎を見つめる旅人の姿が描かれていました。
ストーブの中ではオレンジの火がやさしく揺れ、その光が壁や床に映りこみ、部屋全体を包み込んでいます。

何も語らず、ただ火を見つめる時間。
その静けさの中に、日常ではなかなか出会えない“心の余白”が生まれます。

薪がはぜる音、外の風の音、木の軋む音。
それらがひとつの調和を奏でるように響く中で、旅人の頬にうっすらと灯る赤みが、
この夜のぬくもりを物語っていました。

月夜の蚕小屋──月明かりと、火に宿るぬくもり

ゲストブックのページを開くと、
小さな薪ストーブとともに「ありがとう!!」と書かれた一枚の絵がありました。
炎の中には、笑っているような表情が見えます。
そのやさしい線と色づかいからは、この宿で過ごした夜のぬくもりがそのまま伝わってくるようでした。

〈月夜の蚕小屋〉は、かつて養蚕に使われていた古民家を改修した宿です。
太い梁と土壁、木の香りが残る空間に、Dr.Craftの薪ストーブが穏やかに息づいています。
夜になると、月の光と炎の灯りがやわらかく混ざり合い、部屋の中を淡いオレンジ色に染め上げます。

その光景はどこか懐かしく、時間がゆっくりとほどけていくような静けさがあります。
外の冷たい空気とは対照的に、室内には人の心を包み込むような温度が漂っていました。

この絵に描かれた「ありがとう」という言葉は、単なる感謝の一言ではなく、“心がやすらいだ夜へのお礼”なのかもしれません。
薪ストーブが灯したのは、部屋の暖かさだけでなく、人の心に残る小さな灯り。

それは、火と人が共に過ごした時間の証であり、〈月夜の蚕小屋〉という宿そのものが持つ、やさしさの象徴のようにも感じられます。

火がつなぐ、旅と記憶のあいだで

炎は、消えれば灰になる。
けれどそのぬくもりは、確かに人の心に残っていきます。
宿のゲストブックに描かれた絵たちは、その証のようにページの中で灯り続けています。

山村テラスの森のリビングで過ごした静かな夜も、月夜の蚕小屋で交わされた「ありがとう」の言葉も、すべては一瞬の出来事。
けれど、薪ストーブの炎があったからこそ、その一瞬が記憶に変わりました。

私たちDr.Craftは、そんな“記憶を灯す火”をつくりたいと思っています。
鉄を打ち、火を見つめ、手で仕上げる一台一台のストーブが、人と人、人と時間をつなぐ存在でありたい。

火がある暮らしの中には、言葉にしなくても伝わるあたたかさがある。
それを感じた誰かが、また次の誰かに火を渡していく。

炎は消えても、想いは残る。
その灯りが、これからも静かに人の心を照らしていきますように。

 

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